その8人は、ただ演奏をしていれば楽しかった。
欲のないバンドであった。
このメンバーで、楽しい曲を演り、スタジオの前の中華料理屋でゴハンを食べる。
ただそれだけで良かった。
そんな日々は2年以上も続いていた。
2015年に入っても、相変わらず飲んだり、公園で演奏したり、飲んだり、 誰かに恋人ができたり、すぐ別れたり、飲んだり、バンド練習したり、飲んだりして過ごした。
しかし、ふと誰かが言った。
「バンド名を決めよう。」
気付けば、2年間バンド名すらなかったことに戦慄を覚える。
バンド名を「マルメンチグループ」と定めたその時、何かが動き出した。
オリジナル楽曲制作を2年越しでようやく開始。
スロースターターにも程があるが、バンドの記念碑的一曲「どうかしてるぜベイベー」が
最初にバンドで鳴り響いた時、忌野清志郎が微笑んだ気がした。
一度火がついた彼らは、その火を絶やさないように、立て続けにオリジナル楽曲を制作していく。
2年間ただ楽しんでいただけの彼らは、その過程で自分たちのオリジナリティについて理解していた。
気取らないその先にかっこよさがあるはずだった。
次々と息を吹き込まれていくオリジナル楽曲たち。
まず楽しく、温かみがあり、笑いと泣きが同居し、
時にはうなりをあげ、時には君を優しく見つめる、そういうバンドだった。
今日も酔っ払いたちの宴が夜遅くまで続く。星が綺麗な夜に、歌声が吸い込まれていくのだろう。